先日のこと。
所用で、とある公共施設へ。
受付が少し遅れたこともあり、自分の順番まではどうやら長い待ち時間になりそう。
さて、時間でも潰すかと、いつものようにスマホを取り出そうとして、気づく。
…あれっ、ない。
どうやら車に置き忘れてきたらしい。
いや、困った。
読みかけの本も、音楽も、動画も、SNSの更新も、日記の下書きも。
当たり前のように“いつもそこにあるもの”が、一気に手の届かない場所に。
取りに戻ろうにも、駐車場は建屋からかなり離れている。
このあと短い呼び出しが入るかもしれず、席を外すのも気が引けた。
さて、どうするか。
仕方ない、と待合室に置かれた新聞に手を伸ばしかけて—
ふと、窓の外に目を奪われた。
この施設は、海沿いの郊外、しかも高台にある。
その日は北陸には珍しいほどの晴天で、前日に降った雨が空気を洗ってくれたのだろう、
澄みきった視界の先に海が広がり、その向こうには雪をいただいた山々が、くっきりと浮かんでいた。
思わず、声が出そうになる。
…ソー・ビューティフル!
地元に長く住んでいる僕でも、なかなかお目にかかれないほどの絶景。
気づけば、ただただその景色を眺めていた。
何も考えることなく、まさに無の境地。
仕事のややこしい悩みも、日常の小さな苛立ちも、そして、毎日小一時間おきくらいに頭をよぎる、少しエロい妄想さえも(笑)
不思議と、全部どこかへ消えていた。
忙しさを言い訳にするつもりはないけれど、師走ということもあり知らず知らず心に余裕がなくなっていたのかも。
スマホを忘れただけで、こんなにも静かな時間が流れるなんて。
図らずしも訪れたデジタルデトックス。
心が洗われ、そして妙に満たされた、そんなひとときだった。
また、この景色を見に来よう。
そのときは、よければ貴女も、隣にぜひ。
ヨシヒコ



























