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写メ日記

全113件中1~10件を表示

龍生の投稿

箱舟と雨と、アーチを描いた棚

08/21 23:03 更新

アルバート・アインシュタインは言った
「想像できることが未来を創る」と

──子供の頃
自分の部屋で段ボールの箱舟を作った
完成させるのが楽しみで
胸を高鳴らせて帰宅すると
そこには大きな本棚が置かれていた

箱舟は押し潰され
本棚の後ろに追いやられていた
立派な棚に並んだのは
漫画本ばかり
やがて漫画本は重さに耐えられず
棚ごと歪んでしまい
なぜか怒られて、半分以上捨てられた

机の上にはびっしりと貼られた
勉強のスケジュール表
僕の心と棚は同じように
アーチを描いたまま
箱舟は闇に隠れた

──時は流れ
試験会場に座る僕がいた
国家資格はこれでいくつ目だろう
手応えはある、だが
手応えのない虚しさが残る
読んでいる本といえば
ほとんどが試験用の参考書だった

空想の世界は役に立たない
お金にもならない
そう言い聞かせながら

──仕事の現場
大型物件の構造調査
屋上から地下へと降りていき
最後の危険な作業にあたる
誤れば一気に水が流れ込み
地下は溺死の棺となる

指示を出す僕のトランシーバーが不調をきたす
次の瞬間、防壁扉が作動
怒涛のような水が流れ込む
「間違って押しやがった!」
叫んだ時にはもう遅い
轟音と共に水が押し寄せ
空気は薄れ
視界が闇に沈んでいった

──気づくと
僕は外に立っていた
空から豪雨が降り注ぎ
川は氾濫し
足元を飲み込もうとしていた

「ここは……山のふもと?」
必死に駆け上がる
頂上には一軒の家が見えた
「僕の実家だ……」

扉を開けると
そこには見覚えのある本棚があった
立ち尽くした僕の脳裏に
ひとつの記憶が蘇る
──本棚の後ろに
段ボールの箱舟があるはずだ

子供の頃は動かせなかった棚
全身で押すと
軋む音と共にわずかに動いた
そこに、確かに箱舟はあった

豪雨の中、外へと持ち出す
絶対に沈むはずの段ボールの舟
だが僕が乗り込んだ瞬間
箱舟は光に包まれ
近代的な巨大な船へと変貌した

激流を切り裂き
山を滑り降り
水飛沫と轟音の中を突き抜けていく
僕の身体は再び気を失った

──目を開けると
サプライヤーたちが僕を囲んでいた
「生きててよかった」
どうやら僕は地下の高い鉄筋にしがみつき
奇跡的に水を免れたらしい
普通の人間じゃ到底登れない高さ
皆が驚いていた

あの時の箱舟は幻だったのか
それとも本当に未来から来た船だったのか

ひとつだけ確かに言えるのは
僕は再び漫画やアニメを手に取ったこと
まだ名もない物語を始めるためには
誰も思いつかない想像をして
それを形にすることが必要だと
あの箱舟が教えてくれたからだ

──想像できることが未来を創る
それはアインシュタインの言葉であり
そして今の僕の、生きる物語でもある

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不自由と光と、自由

08/21 05:47 更新

星が輝く夜に
腕の中へと舞い下りたギフト
その瞬間、心に風が吹いた

抱きしめるとあたたかく
閉ざしていた扉の奥に眠る
“本当の自分”を目覚めさせてくれる

その存在は
美しく、太陽のような香りをまとい
不自由の中で輝く
ひとつの自由だった

ひとりで奏でていた旋律は
ふたりになり、複雑に重なり合う
響きは深まり、鼓動と共鳴し
川はやがて海へとたどり着く

守るべき光があると知った時
自由の風は激しさを増し
遥か遠くまで飛んでいった

地面に溜まった雫は
夜空を照らし
また誰かの“本当”を映し出すだろう

その光に触れた瞬間
隠していた影も淡く溶けていく
弱さも強さもひとつの色となり
胸の奥で静かに灯り始める

広がった灯りは波紋のように揺れ
まだ見ぬ誰かの心を照らす
風は重なり、やがて大きな流れとなり
空はひとつに繋がっていく

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地ならしと絶望と、始まりの空

08/20 19:08 更新

「地ならし」
本来は地面の凸凹を均す作業のこと
だが強大な力を持てば
大陸も文明も平らにしてしまう破壊の象徴となる

──階段の下では
いつも息苦しい言い合いが続いていた
明日は学校なのに眠れない夜
「当たり前」を押し付け合い
心の壁は、気づけば空まで届くほど大きくなっていた

大人になっても壁は消えなかった
世間に合わせるために
自分を削って、壊して、形を変える
「いっそ一からやり直せたら」と思いながら
誰かが壁を壊してくれる日を
ただ待っていた

その時ふと見上げた空には
一羽の鳥が自由に翼を広げていた
その姿は遠く、けれど確かに
心の奥に刻まれていた

──ある日
田舎にある巨大研究所へ
外壁調査の仕事で派遣された
果てしなく続く壁を見上げて
「巨人でも入っているのか」と呟く
圧倒されながらも責任者に挨拶をする
その隣にいた影を帯びた少女
僕は直感で「同じ匂い」を感じた

午後の作業を終え、休憩所で再び出会う
少女は静かに言った
「壁を壊して世界を平らにできる」
馬鹿げているはずなのに
その瞳の奥に揺れる光に
僕は耳を傾けていた

「どうすれば?」
「世界に絶望すればいい」
少女の声は刃のように鋭く
同時に、僕自身の影を映す鏡だった

僕はその手を取った
祈るように、願うように
瞬間、光が溢れ出し
外の巨大な壁が崩れ落ちる
中から無数の巨人が目覚め
地鳴りと共に行進を始めた

大地は震え、街は踏み潰され
悲鳴が重なり、建物は瓦礫となり
地面はどんどん平らになっていく
これが望んだ世界なのか──
僕は唖然とした
止めなければと思っても
身体は動かない

その時、空にあの鳥が舞っていた
見上げた瞬間、身体が光に包まれる
気づけば僕は、その鳥の背に乗っていた

巨人たちの頭上を駆け抜け
少女のいる中心へと飛び込む
巨人の腕をすり抜け、轟音の中を突き進み
少女の手を掴んで鳥の背に引き上げた

ふたりで空を飛ぶ
見下ろせば、壁も道もない
ただ遠くまで広がる自由な景色があった

「こんな景色があったんだ……」
少女が呟く
その声はやわらかく
邪悪な影は消えていた
巨人たちの行進は静かに止まり
大地には新しい風が吹き始めた

──本当の自分を隠す必要はない
心に強い想いがあれば
空をいつでも飛べる
自由を求める時
心に眠る巨人が目を覚まし
当たり前の世界を踏み潰して
理想の未来へ進む力となる

今、鳥の背に揺られながら
僕は初めて
壁の向こうの空を
真っ直ぐに見ていた

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水面に広がる花の音

08/19 11:07 更新

朝の水面に
花びらがひとひら落ちてゆく
広がる波紋は懐かしい香りをまとい
胸の奥まで染み込んでいった

波紋をたどり歩いていくと
淡い光に滲んで現れた
静かに目を奪われる、美しい人がいた

その笑顔は静かで
どこか遠い影を抱えているようで
同時に、やわらかな温度を放っていた

貸し切りの小さな部屋に響く共鳴の音
振動がふわりと触れるたび
心は少しずつほどけていく
前よりも深く、言葉を交わし
互いの中に流れる波の形を確かめ合った

テーブルに置かれたのは
冷たく甘いアイスショコラ
それはただのデザートではなく
過去の痛みをやさしく溶かし
未来への切符に変わるようだった

再び歩き出す時
水面に光る波は空へと舞い上がり
まだ見ぬ誰かの胸へと届く
必要とする人のもとへ
やさしく降りそそぐように

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地下とサークルと、最後に立つ者

08/18 01:18 更新

Last Man Standing(ラストマン・スタンディング)
倒れても倒れても、最後に立っていれば勝者
強さとは「一度も倒れないこと」じゃなく
立ち上がり続けることだと、誰かが言った

──現実の僕は
転勤先の職場で、所長の説教を聞き流していた
「白を黒と言え」
そうすれば波風は立たない
地元に帰れるその日までの辛抱だと
いつも心に言い聞かせ、椅子に深く腰を下ろしていた

休日、地下の闘技場へ向かう
ここでは賞金を懸けて技を競い合う
審査員のジャッジで勝敗が決まる世界
僕の番が来る
胸が潰れそうなほど緊張し
体は動かず、時間だけが過ぎる
次の瞬間、ライバルの一撃で床に沈んだ
練習の日々も意味を成さず
「僕には才能が無い」
そう思いながら眠りについた

──翌日
課長と所長に呼び出される
課長は、僕を騙してこの職場に飛ばした張本人
「君をここでリーダーにする」
「地元に戻れるのは数年先だろう」
1年以内と言われていたはずの約束は、あっさり覆された
反論すれば地獄が待つとわかりながら
僕は「光栄です」と答えてしまった
弱いままの自分が、そこにいた

会社の帰り
公園で子どもたちが下手くそなキャッチボールをしていた
それでも笑い声は夜に響いていた
──いつから僕は
弱さを隠すことに怯えるようになったのだろう

闘技場に戻った
全身を震わせながら輪の中心に立つ
全国に名の知れた強豪たちが睨んでいる
心臓は爆発しそうだった
僕の番が来る
もう格好つけるのはやめた
自分の弱さを曝け出した

動きは乱れ、けれど熱は途切れなかった
時間を過ぎても、審査員が止めに入らないほど
会場を揺らす動きが続いていた

結果は──そんなに甘くない
あれほどの状況でも、勝敗は「負け」だった
でもその瞬間、僕は確かに「最後まで立っていた」

──翌日
課長がいつものように偉そうに話し始めた
「あの件なんだが……」
その言葉を遮り
僕は初めて口を開いた
「人を騙すことしかしないあんたにはついていけない」
「僕はこの会社を辞める」
課長も所長も固まったまま、言葉を失った

会社を去る日
所長が最後に飯を奢ってくれた
カレーの湯気の中で
「お前は生意気だったけど、一番優秀だった」
そう笑いながら拳を合わせた
バスの窓の外には、地元へと続く道
風が胸を駆け抜ける

今、僕は自由という空の下で
新しいスタートラインに立っている
強くある必要なんてない
倒れても倒れても、最後まで立っていればいい
弱さを隠さずに
胸の奥で炎を燃やしながら
未来へと歩いていく

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サイレンと炎と、禁断の実

08/17 11:37 更新

サイレンが鳴る
禁断の実を食べた者は
自由を失い
永遠に同じループを繰り返すという

──現実での僕は
会社員を辞め、自分にしか出来ないことを探していた
誰でも出来ることを選べば
また組織という渦に飲み込まれる
試行錯誤の中で
唯一無二の形に近づきつつあった

ある日、取引先の偉い人から
「成功者が集まるコミュニティ」に誘われた
数千人のメンバーがいるという
右を向けと言われれば、右を向く世界
会社と何が違うのか──
そう思った時
どこからともなくサイレンが鳴った気がした

帰り道
道端に燃えるように咲いた赤い花
その花びらを一枚
ポケットに忍ばせた

──翌日
偉い人からの電話
「参加しなければ、取引は難しい」
禁断の実を差し出されているのだと思った
その瞬間、再びサイレンが響いた
身体の力が抜け
気づけば、あの勉強会の会場へと吸い寄せられていた

近代的なビルの会場
椅子に腰を下ろしたその時
耳を裂くような大サイレンが鳴り響く
参加者たちの身体が歪み、溶け、
次々と屍人へと変貌していく

「俺も同じなのか」
絶望が胸を覆ったその時
ポケットの中の花びらが眩く光った
右手に取り出すと
炎となって掌に宿る
天へ突き上げると
その炎は宇理炎のように刃へと変わり
無数の火の粒が飛び散り
屍人たちを焼き尽くした

背後から、さらに重いサイレン
振り向けば
空を覆う巨大な蠅の化け物
その口から、呪いの音が放たれていた

「こいつがサイレンを鳴らしていたのか」
炎が唸りを上げ
刃の形を取り戻す
全身を駆け巡る熱に身を任せ
僕は跳躍し
蠅の怪物を両断した
炎に包まれた悲鳴が夜を裂き
ビル全体が崩れ落ちる

瓦礫を飛び越え
夜風を浴びながら外へ出る
残響のように、遠くでまだサイレンが響いていた

──思う
サイレンに導かれるままなら
楽な道もあっただろう
でも僕は禁断の実を食べなかった
呪われたループを断ち切った

右手には炎がある
宇理炎のように揺らめく光がある
それは「誰かの真似」ではなく
自分にしかできない道を照らす火だ

今、僕は
その炎を胸に抱き
まだ見ぬ未来へと歩いている

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ハンバーガーの失笑

08/16 00:14 更新

こんがり焼けるくらいの陽射し
坂の上から君が降りてくる

火加減を確かめるように
そっと温度を合わせた会話
口に運べば
味が少し違うハンバーガー

UFOみたいな
未確認の丸いバンズ
ひと口ごとに
こだわりとぬくもりが広がっていく

テーブルの上で弾ける笑い声
汁が垂れないペーパーが
幸せな時間をすくい上げる

たわいない話に
ハンバーガーと一緒に失笑をかぶりつく
ケチャップよりも
じんわり甘い時間がこぼれていく

言葉を流し込んだ丸い月が
目の前に浮かぶ
香るカップの向こう
君の微笑みが、湯気となって未来へ飛ぶ

駅までの涼しい道
深い森を抜け
雫が降りてくる街へ帰る

空を見上げる
ほのかに香るひかりが
夜の始まりに
静かに落ちてきた

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コーヒーと最中と、水面の月

08/14 22:30 更新

いつものカフェで
お気に入りのコーヒーを口にする
苦さはメロディーのように胸に響き
その香りは陽だまりの中に溶けていく

しばらく遠くへ旅立つ君は
何を想うのだろう
雲に乗せてプカプカ浮かぶコーヒーの煙は
まだ温もりを帯びて、手のひらに残っている

あの日、3センチの最中の距離で笑い合ったことも
今は遠い空の向こう
夜、窓辺で月を見上げて
冷たい風が心をかすめたら
月を映す水面を思い出そう
そこには、冷えた心をそっと温める光がある

ゆっくりとすすった一杯のように
上品で静かな時間を味わえば
道が見え、流れが変わる
贅沢で、ほっとする至福のひと時
それは夢から覚めても
記憶の奥で香りを放ち続ける

水面には、夜明けの空が映る
新しい朝は、自由の香りを乗せて
また旅を続けようとしていた

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雨上がりの空とハサミと、動き出す時

08/14 03:24 更新

夜の深い眠気の中
一階から小さなノイズが響いていた
翌朝、何も変わらないふりで学校へ行く
帰り道、道の真ん中で
アゲハ蝶が逆さまになって羽ばたけずにいた
そっと指で起こすと
その蝶は嬉しそうに空へ舞い上がっていった

家に帰り玄関を開ける
そこにはいつもあるはずの何かがなく
静けさが部屋を包んでいた
僕は空白を埋めるように
段ボールを切りスーパーカーを作り
万年筆で漫画を描き続けた
壁の時計は止まったまま
時の音が遠くで眠っているようだった

──そして今日
田舎の学校の清掃バイトに向かった
仲間たちと到着した建物は
巨大な時計塔のような校舎
針は動かず、時間が閉ざされている

事務所には
不気味な笑みを浮かべた女の校長と
悲しげな目をした10歳ほどの少女がいた
「うちの子がやんちゃで…迷惑をかけたらごめんなさい」
校長の声に、冷たい影が混ざっていた

作業を始め、一階を掃除していた僕は
仲間の姿が見えないことに気づく
背後から金属が擦れる
耳を裂くような音が響いた
振り返ると、巨大なハサミを抱えた
醜悪な子供の姿をした化け物が立っていた

刃が振り下ろされる
間一髪でかわし、廊下を駆け抜ける
その影は執拗に追い、壁を裂き、床を砕く
耳の奥で、あの少女の声が囁く
「諦めないで…ポケットを探して」

手を突っ込むと、
そこにはスーパーカーを作ったあのハサミがあった
迫る巨大な刃をすり抜け、
僕は化け物の片目に自分のハサミを突き刺す
化け物が倒れ、沈黙が訪れた

──だが、少女の声は続く
「時計塔の針を動かして…止まっていた時を動かして」
僕は最上階へ向かう
駆動部にたどり着くと、
歯車の間に黒いクサビが打ち込まれ、動きを封じていた

背後から、またあの金属音
振り返ると、死んだはずのハサミ男がそこにいた
その瞬間、階段下から校長が飛びかかってくる
「醜くても…私の大事な子を…!」
首を締める力が増していく
視界が暗くなる、その時――

空から無数の影が舞い降りた
あの日のアゲハ蝶が仲間を引き連れ
光の渦のように校長を取り囲む
羽音が嵐となり、校長は悲鳴を上げ
階段から転げ落ち、静かに動かなくなった

再び少女の声
「子供の時の心を思い出して」
目の前に、スーパーカーと万年筆が浮かび上がる
僕はそれらを一つに繋ぎ、
願いを込めて歯車へ放った
閃光の軌跡を描き、クサビを砕く
歯車は動き出し、時計の針が静かに進み始めた

ハサミ男は絶叫と共に階下へ叩きつけられ
炎に包まれ、灰となって消えた

外に出ると、空は雨上がりの群青
星々が瞬いていた
その瞬きは、止まっていた時が動き出す音のようだった

僕は思った
一人じゃない
あの日の声も、羽ばたきも
子供の時の心が、そっと背中を押してくれる
もう誰の影にも縛られず
自分の足で選んだ道を歩いていける
その道は、自由な空へ続き
星々の光が、これからの僕を
果てしなく照らしていた

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子猫と巨人と、心の刃

08/12 21:54 更新

雨の中
足元でいつも見上げてくる子猫がいる
濡れた毛の奥から光る
まっすぐで澄んだ瞳
抱きかかえて、ぎゅっと抱きしめる
その温もりは、
一人じゃないような気持ちにさせてくれた
最近、毎晩その夢を見る

──現実では
仲間と投資をしていた会社のミーティングの日
ここにいれば、成功者の真似をすれば
自分も同じ場所に辿り着けると思っていた
長い会議、笑顔でうなずきながら
心の中は空っぽのまま
実績者を持ち上げ続ける
「本当に…この場所でいいのか」
その違和感は
帰り道の夜風の中でも消えなかった

翌日
会場に集まった僕らの前で
ワインが配られた
嫌な予感がして、口をつけなかった
リーダーの声が響く
「重要な報告がある…
投資していた事業は継続できなくなった」
沈黙の中で
さらに信じられない言葉が落ちる
「次の事業に投資しよう
成功者の言葉に従えば…」

その瞬間
ワインを飲んだ全員の身体が膨張し
皮膚が裂け、筋肉が剥き出しになり
巨人へと変わっていった
リーダーは笑う
「さあ、同じ方向へ進もう」

僕だけが人間のまま
地響きと咆哮
逃げ惑う中、足元にあの子猫がいた
雨に濡れた瞳が僕を見上げる
抱きしめた瞬間、
体内に電流のような波動が走り
腰には空を駆ける装置
手には巨人を裂く刃があった

瓦礫を蹴り、
雷鳴のような加速で空を舞う
巨人のうなじを切り裂く度に
血しぶきが雨と混ざって降る
息も絶え絶えに
最後の一体──巨人化したリーダーへ突っ込む

「俺がここから出られないとでも思ったか」
「周りの全員が巨人になっても
俺は、自分の心の中に答えがある」

刃が閃き
巨人の体は崩れ去った

──静寂の中、腕の中の子猫が
小さく鳴いた
それは
他人の成功に寄りかかっていた僕に
自分の答えを取り戻させる声だった

その声は、
雨上がりの空に浮かぶ一筋の光のように
これから進む道を、
確かに照らしていた

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