変わり行く日々の中で、
ずっと置き去りにしていたのは、
“なりたい自分”じゃなく、
“本当は触れてほしかった自分”。
鏡に映る僕は、
誰にも甘えられず、どこか張り詰めていた。
無理に笑う唇が、少しだけ震えていた。
——変わりたい。けれど、怖い。
変わらなければ、もっと怖い。
静かに足を運んだ、あの街。
都会のざわめきの中、
風が、服の裾をそっと撫でていった。
触れたのは、表面じゃない。
呼吸の奥、心の奥、もっと深く——
誰にも見せたことのない場所まで。
居場所もなく、流されながら
不意に君を見つけた。
吐息よりも近い距離で、
君が僕の中を優しくほどいてく。
言葉じゃない温度で、
心の扉が軋む音がした。
君の瞳に映った僕は、
こんなにも柔らかく、愛されたがっていた。
これからも、僕は歩いていく。
まだ見ぬ誰かの中で、
本当の僕に、また出会うために。
——今日もまた、鏡の前で指をとめる。
あの夜、君がくれた視線の余韻が、まだ残っている。
