星が降ってくる、
そんな感覚があった。
彼女から届いた最初のメッセージは
まるで夜空からまっすぐ
手のひらに落ちてきた光の粒だった。
そこには
「自由になりたい」という祈りと、
「いまを生きたい」という静かな決意が乗っていた。
表の自分と、本当の自分。
そのあいだで揺れてきた心が
自分のタロットカードを見つけたいと願っていた。
それはまるで
僕自身がかつて選んだ“自由”というカードと
静かに呼び合うようだった。
当日、目の前に現れた彼女は、
気品としなやかさ、
そして目を奪われるような静かな美しさを纏っていた。
でもその目の奥には
新しい体験にわくわくしている
子どものような澄んだ感性が
そっとゆれていた。
隠してきた自分を、
そっと手渡すように。
その所作や、ふとしたまなざしの中に
たしかな“ゆだねる勇気”が宿っていた。
そして、僕たちは静かに触れあった。
ぬくもりが重なり合いながら
言葉よりも深く、
呼吸のリズムで心が近づいていく。
ふとした吐息の重なりが
空気をすこし甘くする瞬間――
それは、誰にも見せたことのない
“感じる自分”を迎え入れる時間だった。
夜が更けるころ、
ふたりのあいだに降りてきたのは
言葉のいらない静けさだった。
肌の温度と、指先の記憶と、
そのすべてが、音のない余韻として
胸の奥に残っていた。
彼女は
もう自分のカードを見つけていたのかもしれない。
誰かに従うためではなく
自分をやさしく受け入れるという選択。
“誰かのための私”ではなく、
“私のままで生きる”という
小さくて強い一歩だった。
帰り道、雨が降っていた。
大きな日傘をさして、
ふたり並んで歩いた。
肩がふれて、手がふれて、
その余韻に、まだ身体がほどけていた。
ふと空を見上げると
まだ星は、ちゃんとそこにあった。
