僕はずっと、周囲と違っていた。
みんなが当たり前にできることが、僕にはできなかった。
でも、僕にしかできないことも、ちゃんとあった。
なのにそれは、誰にも認められない“得意”だった。
当たり前や期待に応えられない僕は、
“変わり者”という呪いをかけられた。
右手には、罪悪感。
左手には、孤独感。
そんな二重の呪いを抱えたまま、
“常識”という魔物であふれた世界を、
僕はただ彷徨っていた。
やがて大人になり、社会という荒野に一人、放り出された。
それでも、僕は自分の好きなことだけを、静かに積み上げた。
笑われても、無視されても、自分の火を消したくなかった。
ある雨の日、
疲れきった心で空を見上げた交差点の向こうに、
巨大な積乱雲が浮かんでいた。
その奥に、誰にも見えない“龍”がいた。
天を裂くように吠え、まばゆい光をまとって空を舞った。
その瞬間、
右手と左手に宿っていた呪いがほどけ、
代わりに現れたのは、
“個性”という究極の剣と、
“共鳴”という炎だった。
それからの僕は、
周囲の「お前は変わってる」という声を、
その炎で焼き尽くした。
“当たり前”と“普通”という名の幻想を、
個性という究極の剣で斬り裂いた。
見た目だけの武器を振り回す誰かとは違う。
僕は、心の中の“積み重ね”だけで戦っていた。
そして、ある日出会った。
「封神演義」という物語に。
ただの人間だった者が、
試練を越えて、やがて神格化されてゆく。
強さとは、力じゃない。
伝説とは、積み重ねた心の記憶。
──今、僕は自由だ。
誰にも真似できない翼で飛び、
旅の中で出会う人から「ありがとう」をもらっている。
あの日、積乱雲の中で見た“龍”は、きっと僕自身だった。
分厚く積み上げた、個性という名の雲の中に、
静かに輝いていた、“本当の自分”だったのかもしれない。
